国土数値情報の地価公示データを使って、東京都中央区の地価が1995年から2023年までどう動いたかを地図上で見られるサイトを作りました。
https://chuo-ward-landprice.onchange.workers.dev/
スライダーを1995年から2023年へ動かすと、円の大きさ(=地価)と色(=1995年比)が変わっていきます。日本橋・銀座・八丁堀・勝どきなど、中央区の19地点を並べてあります。
同じ中央区で、地価は23倍ちがう
まず目につくのは、区内の格差です。2023年の断面で見ると、いちばん高い銀座四丁目交差点(三越・和光のあたり)が2,860万円/m²。いちばん安い日本橋人形町の裏通りが127万円/m²。同じ区の、電車で数分の距離で、22.5倍の開きがあります。
「銀座は高い」という話は誰でも知っていますが、数字で並べると、その差が中央区という一つの区の中に収まっていることに改めて驚きます。
1995年を超えたのは、19地点のうち3地点だけ
このサイトでは各地点を「1995年=100」の指数にして、色で表しています。100を超えれば暖色、下回れば寒色です。
28年たった2023年時点で、1995年の水準を超えているのは次の3地点だけでした。
- 銀座四丁目交差点 … 201(1995年の約2倍)
- 松屋銀座 … 169
- 東京駅八重洲南 … 145
いずれも、基幹の駅や大通りの交差点に面した街区です。残りの16地点は、いまも1995年の水準に届いていません。地名としてのブランド(銀座・日本橋)で回復したわけではなく、「どの通りに面しているか」で戻り方が大きく違う、という印象を受けます。
実際、同じ銀座でも一本裏に入った銀座二丁目は63にとどまります。これは日本橋側の裏通りとそれほど変わりません。
再開発の中心でも、6割弱
個人的にいちばん意外だったのが、日本橋室町です。三井本館やCOREDO室町がある、日本橋再開発の象徴のような場所ですが、指数は57(535万円/m² → 303万円/m²)。COREDO室町の開業(2010年)を挟んでも、1995年の6割弱にとどまっています。
再開発が街の賑わいを変えたのは間違いないと思いますが、少なくとも地価公示という一つの指標で、隣の街区までは十分に波及していない、という見え方になります。地価は再開発の効果が反映されるまで時間差もあるので、これだけで結論を出せる話ではありませんが、事実として「戻っていない」ことは記録に残っています。
全地点の「底」が、2004〜2005年に集中していた
スライダーを動かしていて気づいたのは、多くの地点が同じタイミングで底を打っていることです。19地点のうち15地点が、2004年か2005年に最安値をつけていました。バブル崩壊後の下落が、この時期にそろって止まっている。個別の街の事情というより、もっと大きな流れがあったことがうかがえます。
「地点が増えると比較にならない」という落とし穴
作る過程で一度つまずいた話を書いておきます。
地価公示は毎年少しずつ調査地点が増えます。中央区も、古い年ほど地点が少なく、新しい年ほど多い。最初はデータにある全64地点をそのまま地図に出していたのですが、これだと再生したときに「点が増えていく」のか「地価が動いた」のか区別がつきません。増えた点は、単に新しく調査対象になっただけなのに、画面上は何かが起きたように見えてしまう。
そこで、1995年から2023年まで欠測なく調査され続けた19地点だけに絞りました。全期間で地点数が変わらないので、純粋に同じ地点の推移だけを比べられます。地点数は減りましたが、比較として成立するほうを取りました。
データの扱いで気をつけたこと
- 地価公示の地点は「その街区の標準的な地価」であって、特定の建物の資産価値ではありません。施設名のラベル(「COREDO室町」など)は場所の目印として付けたもので、その建物の敷地価格ではない、という点は注記に入れています。
- 年と年のあいだはスライダーで滑らかに動きますが、これは表示上の補間で、実際の調査は年1回です。
- 出典は「国土数値情報(地価公示)(国土交通省)を加工して作成」。二次利用のルールに沿って明記しています。
技術メモ
- 地図は MapLibre GL JS と地理院タイル(淡色地図を暗く加工)。
- 地価公示データ(国土数値情報 L01)は zip の中に GeoJSON が同梱されていて、座標変換なしで使えます。1983〜2023年の各年価格が1レコードに全部入っているので、時系列を作るのが楽でした。
- データはビルド時に静的な GeoJSON へ落としてあり、実行時に外部APIを叩きません。中央区19地点・28年分で、gzip後およそ4KBです。
- 地点ラベルは日本語なので、MapLibre の symbol レイヤー(フォントの外部配信が必要)を避け、HTMLの要素として重ねています。近すぎるラベルは、地価が高いほうを優先して間引いています。
- ホスティングは Cloudflare Workers。
- ソースは GitHub に置いてあります: github.com/onchange/chuo-ward-landprice
丸の内への通勤流動を可視化した前のプロジェクトが「どこから人が来るか(空間)」だったのに対し、今回は「28年で何が起きたか(時間)」を見るものになりました。


